リオデジャネイロオリンピック女子マラソン代表選手の選考レース「名古屋ウィメンズマラソン」が昨日行われました。
結果は第一生命所属の田中智美選手が、天満屋所属の小原怜選手との1秒差のデットヒートを制し、2時23分19秒で日本人トップの2位に入りました。
これで代表選考レースがすべて終了しましたが、すんなりと代表選考は終わるでしょうか?
代表選考は無風?
まずは今回の代表選手選考要項をみていきましょう。
代表選手選考要項
女子の選考レースは以下の4レースとなります。
①第15回世界陸上競技選手権大会(2015/北京)
②第1回さいたま国際マラソン(2015/さいたま)
③第35回大阪国際女子マラソン(2016/大阪)
④名古屋ウィメンズマラソン2016(2016/名古屋)
選考基準
(1)選考競技会①(世界選手権)の8位以内入賞者で、日本選手最上位者1名を内定する。
(2)選考競技会②~④において日本人3位以内の選手から、下記の1)から2)の優先順位で選考する。
1) 日本陸連設定記録(2時間22分30秒)を有効期間内に満たした競技者。(各最大1名)
2) 各選考競技会での記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された競技者。
選考方法
(1)選考基準(1)による選考は、即時内定とする。
(2)選考基準(2)による選考は、全選考競技会終了後、編成方針及び選考基準に則り、強化委員会にて選考原案を作成し、原案策定会議で選考し、理事会において決定する
誰が選ばれるのか?
選考レースの結果
まずは、各選考レースの日本人選手の成績を見ていきましょう。
①第15回世界陸上競技選手権大会(2015/北京)
日本人1位 7位入賞 2時間29分48秒 伊藤舞(大塚製薬)
②第1回さいたま国際マラソン(2015/さいたま)
日本人1位 2時間28分43秒 吉田香織(ランナーズパルス)
日本人2位 2時間31分06秒 渋井陽子(三井住友海上)
日本人3位 2時間36分29秒 小田切亜希(天満屋)
③第35回大阪国際女子マラソン(2016/大阪)
日本人1位 2時間22分17秒 福士加代子(ワコール)
日本人2位 2時間28分20秒 堀江美里(ノーリツ)
日本人3位 2時間29分14秒 竹中理沙(資生堂)
④名古屋ウィメンズマラソン2016(2016/名古屋)
日本人1位 2時間23分19秒 田中智美(第一生命)
日本人2位 2時間23分20秒 小原怜(天満屋)
日本人3位 2時間24分32秒 清田真央(スズキ浜松AC)
基準から誰が選ばれるかを考察
選考基準(1)、選考方法(1)から、世界選手権で7位入賞をした大塚製薬所属の伊藤舞選手はすでにリオ五輪代表内定となりました。
よって代表選手は残り二人ということになります。
選考基準(2)のから、大阪国際女子マラソンを2時間22分17秒の好タイムで優勝したワコール所属の福士加代子選手はほぼ間違いなく選考されるでしょう。
ここで代表選手は残り一人ということになります。
選考基準(2)からもう一人が選ばれるのですが、タイムを見ると「名古屋ウィメンズマラソン」の日本人選手1位~3位が、「埼玉国際マラソン」日本人1位の吉田選手、「大阪国際女子マラソン」の日本人2位の堀江選手を大きく上回っていることから、「名古屋ウィメンズマラソン」から最後の一人が選ばれるでしょう。
となると、直接対決で日本人1位となった第一生命所属の田中智美選手が最後の一人に選ばれると思われます。
よってリオオリンピック女子マラソン代表選手は、
大塚製薬所属の伊藤舞選手
ワコール所属の福士加代子選手
第一生命所属の田中智美選手
の3人が選ばれることになるということですね。
福士選手が名古屋ウィメンズマラソンに出場すると宣言したことから、今回の女子マラソン代表についてはかなり話題になりました。
しかし今回はこの3人以外の選考は正直考えられないですよね。
99.9%この3人で決まるでしょう。
100%ではないのか?
99.9%といいましたが、100%ではないのでしょうか?
世界選手権北京女子マラソン選考の混沌
この北京で行われた世界選手権女子マラソンの選考では、物議をかもしました。
これは選考レースの横浜国際で優勝した田中智美が落選し、大阪国際マラソン3位天満屋所属の重友梨佐選手が3枠目で選ばれたことがおかしいのではないのかというものでしたね。
確かに重友選手のほうが田中選手よりも18秒タイムが早かったのですが、優勝した価値はないのかという疑問の声がたくさんありました。
まあ自然に考えれば、外国人選手とのデットヒートを制した田中選手が選ばれるのが順当ですよね。
ではなぜ田中選手が落選したのか?
ここで囁かれたのが「天満屋優遇ではないのか?」というものです。
天満屋とオリンピック女子マラソン
天満屋はこれまで4回連続オリンピック女子マラソンに選手を送り出してきました。
2000年 山口衛里選手 シドニーオリンピック女子マラソン 7位
2004年 坂本直子選手 アテネオリンピック女子マラソン 7位
2008年 中村友梨香選手 北京オリンピック女子マラソン 13位
2012年 重友梨佐選手 ロンドンオリンピック女子マラソン 79位
4回連続はすごいです。3人しか選ばれない女子マラソンですからね。
上記の4人の選考は「まあ順当なのかな」というのが正直なところです。
山口衛里選手は、選考レース最速タイムで優勝なので文句なしでした。
アテネオリンピックの坂本直子選手の時は、高橋尚子選手が落選するということでかなり騒がれましたが、まあ選考会自体の成績を比較すると坂本選手が選べれるのが妥当だったと思います。
このときは世界選手権銅メダルの千葉真子選手も落選するなどかなりハイレベルな選考となった記憶があります。
中村友梨香選手は、選考レース優勝者でタイムも他の選手よりも上だったので3枠目に選ばれました。
重友梨佐選手は、選考レース優勝者でタイムも他の選手よりも上だったので、まあこちらも文句なしの選出でしたね。
こうしてみるとよく言われている「天満屋枠」というものは、オリンピックでは風評ではないのかと思います。
しかし先に述べたように、北京での世界選手権女子マラソンの選考は、「天満屋優遇」「天満屋枠」とうわさされても仕方がないものだと私も思います。
天満屋総監督・武富豊氏
天満屋には武富豊総監督という名伯楽がいます。
天満屋女子陸上競技部を現在の強豪へと作り上げた偉大な監督です。
問題はこの天満屋の武富豊総監督が、日本陸上競技連盟のマラソン部長を務めているということですね。
天満屋の総監督が日本陸連のえらいさんであるため、北京世界選手権女子マラソンの選考で天満屋が優遇されているのではないかと噂が出ていますが、そう思われても仕方ないと思います。
実際のところは正直わかりません。密室で選考は決定されるので私には知る由もありません。
しかし「李下に冠を正さず」「瓜田に履を納れず」のように、他人に疑われるような状況を作ってしまうのはよくないことだと思います。
もちろん実際に優遇がされているかどうかわかりませんが、このようなうわさが立ってしまう状況がよくないと思います。
天満屋の五輪女子マラソン連続出場は途切れるか
上記で述べたとおり、今回のリオオリンピック女子マラソン代表は、
大塚製薬所属の伊藤舞選手
ワコール所属の福士加代子選手
第一生命所属の田中智美選手
の3選手で決定だと思います。これをひっくり返す材料が正直思い浮かびません。
天満屋所属の小原怜選手は田中選手に1秒差の僅差負けでしたが、直接対決で負けてしまったので、田中選手を差し置いて選ばれる可能性はほぼゼロでしょう。
ネットで噂される「天満屋マジック」とされるものが今回見られることはないと思います。
ですので、天満屋の五輪女子マラソン連続出場は途切れてしまうと思います。
それにしても「名古屋ウィメンズマラソン」は、私の予想よりも好タイムでした。
もし田中選手と小原選手のタイムが福士選手を上回っていたらどうなっていたでしょうか。かなりどころか相当もめていたのではないでしょうか。(それとも逆にもめなかったのか?)
歴史に「もし」はありませんが、かなり興味があります。まあ「もしも」の話をしても仕方がないですね。
リオオリンピック女子マラソン代表は、3月17日に日本陸連理事会で決定されます。さてどうなるでしょうか。