財務1

財務省が「財務大臣になって財政改革を進めよう」というシミュレーションゲームを公開しました。

このゲームは、財務大臣として財政改革を行い、 2020年度までに基礎的財政収支の黒字化を目指すというゲームなのですが、なかなか突っ込みどころ満載のゲームに仕上がっているようです。

ゲームの内容は至極単純で、「社会保障」「公共事業」「教育」「科学技術振興」「防衛」「経済協力」「食料安定供給」「エネルギー対策」「中小企業対策」「地方交付税交付金」「税制改革」の各項目の政策経費及び税収の増額・減額・現状維持のいずれかを選択していくだけのものです。

結果、基礎的財政収支をプラスにすればゲームクリアということですね。

一度やってみるとわかりますが、「社会保障」と「地方交付税交付金」を減額し、「税制改革」で増税をすればクリアできるというお花畑ゲームなのですが、ある意味現在の日本の財政の問題点を浮き彫りにしてくれてもいます。

歳入と歳出が違いすぎる

歳出歳入

公債金34.4兆円を抜いた平成28年度の歳入総額は、62.3兆円です。

一方歳出総額は、96.7兆円となっています。

計算の合わない34.4兆円が公債金(いわゆる国債)となっており、それにより歳入と歳出を釣り合わせているのですね。

大きい金額を削る必要がある

このお花畑ゲームでも、やってみてわかることがあります。

それは大きく使われているお金を削らなければ、財政健全化はできないということです。

財務2

このゲームは、「社会保障」と「地方交付税交付金」を減額し、「税制改革」で増税をすればクリアできると先ほど言いましたが、歳出の33%を占める「社会保障費」と15%を占める「地方交付税」を削減しないと歳出を減らすことはできません。

いわゆる大きい金額である「社会保障」と「地方交付税」以外の、「教育」「科学技術振興」「防衛」「経済協力」などのお金を削ったところで焼け石に水であるということです。

このゲームをしてみてわかったことは、「財務省は将来的に社会保障費を削る気満々だろうな」ということです。

「地方交付税交付金」を削るということは、地方の反発がかなりあると考えられるので、国としてはなかなか手を付けにくいことでしょう。

とすると、財政健全化のためには「社会保障費」を削って、税金を上げるという方法が一番簡単なのですね。

そう考えると、私自身はこの「財務大臣になって財政改革を進めよう」ゲームをお花畑だと馬鹿にしていましたが、けっこう真実をついているゲームなのかもしれません。

しかしながらこのゲームでは、基礎財政収支をプラスにするために、意図的?に外されている項目がありますよね。

それは「公務員の人件費」です。(まあ実際のところ、「地方交付税交付金」は地方公務員の人件費に使われていると考えられているので、この項目が「公務員の人件費」といえるかもしれませんね。)

現在の公務員の人件費は、どれくらいの金額となっているのでしょうか。

現在の公務員人件費

財務省の発表によると、平成27年度の公務員(公務部門)の人件費は、国と地方を合わせて26.4兆円となっています。(国家公務員人件費5.1兆円、地方公務員人件費20.3兆円)

人件費

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/seifuan27/05-17.pdf

これに約200万人といわれる非正規雇用の公務員の人件費や各種天下り団体の人件費がプラスされます。(非正規公務員の給与は非常に安いですのでここに文句を言うつもりはありません。また非正規公務員の人件費は、通常事業費として計上されているようですが、実質的には人件費なのでここでは人件費として考えたいと思います。)

まず間違いなく公務員の人件費は、総額30兆円以上となっているでしょう。(実際の人件費総額はわからないです。特に天下り団体など無駄な公益法人的なものが日本はたくさんあります。ここの人件費が謎に包まれているところなんですよね。)

平成27年度の歳入

平成27年度の国の歳入と、地方の歳入をみてみましょう。

平成27年度の国の歳入は、58.1兆円となっています。

また平成27年度の地方の歳入は37.5兆円となっています。

合計すると95.6兆円です。

平成27年度の公務員の人件費は30兆円は超えているでしょうから、およそ3分の1が公務員の人件費に使われているということになりますね。

人件費の比率が30%を超えるというのはやはり高いのではないでしょうか。

少し前の資料になりますが、財務省が法人企業統計年報をもとに売上高人件費比率を公表しています。

売上高人件費比率
http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/keyword/keyword_05.htm

これを見ると、13%~15%程度が全産業の売上高人件費比率となっているようです。

そう考えると、やはり公務員の売り上げ人件費比率は高いと言えますよね。(歳入は売り上げという概念は少し違うと思いますが・・・)

「地方交付税交付金」は地方公務員の人件費になっているという話をよく聞きますが、ゲームのようにがっつり「地方交付税交付金」を削減してみたらどうなるのでしょうか。

3割削減したら5兆円近く節約できるので、消費税2.5%ぐらいの価値はあるんですけどね。まあそうはうまくはいかないでしょうか。いや、うまくいきそうな気がします。

これから少子高齢化がどんどんと進んでいきます。そうすれば間違いなく社会保障費も増えていくでしょう。

とすると財政健全化のためには、「社会保障費を削る」「公務員の人件費(地方交付税交付金)を削る」「税収を上げる」などの方法をとる必要が出てくるでしょうね。

しかしながら「社会保障費を削る」のは、正直限界があると思います。

それでは「税収を上げる」という必要が出てきますね。

ゲームでは、「税金を上げる(増額する)」でしたが、現実の社会では「税収を上げる」ことが必要となります。

なかなか思い通りに入っていませんが、首相が言うように景気を回復して税収を増やすのですね。

消費税を上げても税収が増えなければ意味がありませんので、首相には消費税を上げるタイミングを熟考してもらいたいものです。

最後に財務省はこの「財務大臣になって財政改革を進めよう」ゲームを作るために、どれくらいの予算を使ったのでしょうか。

ゲームをしてみてわかったのですが、本当に単純なゲームです。ただの引き算と足し算をしているだけです。

ランサーズあたりでこのゲームを作成依頼すると、10万円~30万円ぐらいで作ってくれる人がいるんじゃないでしょうか。

でも財務省ならこのゲームの作成に間違いなく100万円単位の予算を使っているような気がします。ひょっとすると桁が一つ上がるのかもしれません。(さすがにそれはないかな?)

まあ実際のところを知る由はありませんが、このような一つ一つの無駄がありそうな作業を節約していってもらいたいものですね。